ADHD(注意欠如多動症)と診断された患者さんに、薬での治療を勧められることがあります。
今回は、インチュニブ。 こどもに本当に飲ませていいのかな?コンサータやストラテラとの違いは?コンサータと併用して大丈夫?そんな疑問に答えたいと思います。
私は、調剤薬局で働いている現役薬剤師です。インチュニブの説明も数多くさせていただいています。
インチュニブのメリット・デメリット、コンサータ・ストラテラとの違いなど、わかりやすく解説したいと思います。またインチュニブとコンサータの併用についても解説しています。お子さんにインチュニブを服用させることに悩んでいる保護者の方の参考になれば幸いです。
インチュニブは、どんな薬?
ADHDの症状と治療については、コンサータのページで紹介しています。参考にしてください。
インチュニブは、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)の患者さんに使用される薬です。
アドレナリン受容体に作用して、脳内の神経伝達物質の働きを調節することにより、注意欠陥/多動性障害の症状を改善します。
非中枢神経刺激薬で、依存の心配はありません。
以前は高血圧症治療薬として販売されていた薬なので、低血圧や徐脈の発現に注意が必要です。
インチュニブのメリット
ストラテラ同様、インチュニブでも、流通管理システムへの登録の必要ありません。コンサータのみ流通管理システムへの登録が必須になります。
1日1回の服用です。飲む時間帯はなるべく一定にするのがよいとされていますが、特に指定されていないというメリットもあります。
剤形
インチュニブの錠剤の大きさは、コンサータ錠やストラテラカプセルと比較すると、小さいです。
ストラテラカプセルのジェネリック、アトモキセチン錠はさらに小さい錠剤ですが、インチュニブ錠も、まだ飲みやすい大きさではないかと思います。
インチュニブ錠 1mg | インチュニブ錠 3mg | コンサータ錠 18mg | ストラテラカプセル 5mg/10mg 25mg/40mg | アトモキセチン錠 5mg「トーワ」 |
---|---|---|---|---|
直径:約7.1mm | 直径:約7.9mm | 長径:12mm 短径:5.3mm | 15.8mm 5.85mm | 5.1mm 2.8mm |
インチュニブは徐放性製剤です。割ったり、砕いたり、すりつぶしたりしないで、そのままかまずに飲んでください。
用法・用量
インチュニブは、1日1回の服用です。効果を持続させるために、毎日同じ時間に服用することが推奨されますが、特に服用時間は指定されていません。ライフスタイルに合わせて服用することができます。
眠気の副作用を軽減させるために寝る前に服用したり、寝る前は飲み忘れるので朝に服用したり、自分に合う飲み方を探すことができます。
推奨される用量がありますが、体重が50㎏を超える場合でも1mgから様子を見ながらスタートすることも少なくありません。処方する医師の指示通りに服用してください。
用法の違いは以下のとおりです。
- インチュニブ…1日1回
- コンサータ…1日1回、朝
- ストラテラ(アトモキセチン)…1日2回
用法・用量
〈18歳未満の患者〉
通常、体重50kg未満の場合はグアンファシンとして1日 1mg、体重 50kg以上の場合はグアンファシンとして1日 2mgより投与を開始し、1週間以上の間隔をあけて1mgずつ、下表の維持用量まで増量する。
なお、症状により適宜増減するが、下表の最高用量を超えないこととし、いずれも 1日1回経口投与すること。インチュニブ錠1mg・3mg 添付文書
体重 開始用量 維持用量 最高用量 17kg以上 25kg未満 1mg 1mg 2mg 25kg以上 34kg未満 1mg 2mg 3mg 34kg以上 38kg未満 1mg 2mg 4mg 38kg以上 42kg未満 1mg 3mg 4mg 42kg以上 50kg未満 1mg 3mg 5mg 50kg以上 63kg未満 2mg 4mg 6mg 63kg以上 75kg未満 2mg 5mg 6mg 75kg以上 2mg 6mg 6mg
効果
ストラテラ同様、終日効果が持続します。コンサータは朝服用で、夜になるとお薬の効果が切れるので、そこが大きな違いです。
効果発現時期は、以下のとおりです。(あくまでも目安です。)
- コンサータ…服用初日から効果を実感することもある
- インチュニブ…服用開始後1~2週間(反復投与開始後約 5日で定常状態に達すると添付文書に記載あり)
- ストラテラ…服用開始後4~6週間以上
ADHD中核症状に対し約70%の有効性が認められ、2017年に小児ADHD治療薬として承認されました。眠気などの副作用の対策としても1日1回夜服用で有効性が期待されます。
日本小児神経学会:Q69:注意欠如・多動症(ADHD)にはどの様な治療法がありますか?
インチュニブとコンサータの併用による効果
インチュニブとコンサータを併用する場合があります。併用する主な目的は以下のとおりです。
- 異なる作用機序を持つため、併用することで相乗効果が期待できる。
- コンサータの作用時間が12時間であるため、コンサータの効果の切れる時間をインチュニブで補う。
- インチュニブの眠気が強い場合、コンサータとの併用によりバランスを取る。
インチュニブのデメリット・副作用
インチュニブには、血圧低下の副作用があるため、飲み始める前と飲んでいる間は、定期的に血圧や脈拍数の測定が行われます。
低血圧、起立性低血圧、徐脈、心血管疾患のある方は、特に注意が必要です。
副作用
コンサータとストラテラでは消化器症状の副作用が多かったのですが、インチュニブの副作用は眠気が最も多いです。
授業中に寝てしまうお子さんもいらっしゃいます。眠気があらわれる可能性があるお薬を飲んでいることを、学校の担任の先生に伝えておいてください。
続けていると慣れてくることもあるのですが、眠気が強い場合は、医師に相談してください。お薬を減量することもあります。
インチュニブの患者さん向け説明書には、以下の注意点が書いてあります。
- インチュニブを飲んでいる時は、高い所に登る、組体操、倒立などの遊びや行動にご注意ください。(なお,危険を伴う組体操などはしないでください)
- インチュニブを飲んでいる時は,自動車や二輪車などの乗り物の運転はしないでください。
血圧低下の副作用もあるので、起立性調節障害もある場合は、特に気を付けてほしいです。脱水状態になると血圧が低下する可能性があるので、脱水にならないよう水分を十分にとってください。
重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
インチュニブ錠1mg・3mg 添付文書
- 低血圧(20.5%)、徐脈(14.9%)
- 高度な低血圧、徐脈があらわれ、失神に至る場合がある。
- 失神(頻度不明)
- 房室ブロック(0.5%未満)
その他の副作用
発現頻度が高い副作用のみ記載しています。
記載された副作用がすべてではありません。気になる症状が出た場合は、医師または薬剤師に相談してください。
インチュニブ錠1mg・3mg 添付文書
5%以上 1~5%未満 過敏症 循環器 起立性低血圧 精神神経系 傾眠(49.8%)、頭痛、不眠、めまい 消化器 口渇、便秘 腹痛、食欲減退、悪心、下痢 その他 倦怠感 遺尿、体重増加
その他の注意事項
禁忌(次の患者には投与しないこと)
インチュニブ錠1mg・3mg 添付文書
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性
- 房室ブロック(第二度、第三度)のある患者[本剤の中枢性の徐脈作用により症状が悪化するおそれがある。]
特定の背景を有する患者に関する注意
インチュニブ錠1mg・3mg 添付文書
- 合併症・既往歴等のある患者
- 低血圧、起立性低血圧、徐脈、心血管疾患のある患者又はその既往歴のある患者、血圧を低下又は脈拍数を減少させる作用を有する薬剤を投与中の患者
- 血圧のある患者又はその既往歴のある患者
- 不整脈又はその既往歴のある患者、先天性 QT延長症候群の患者又は QT延長を起こすことが知られている薬剤を投与中の患者
- 狭心症及び心筋梗塞等の虚血性心疾患のある患者又はその既往歴のある患者
- 脳梗塞等の脳血管障害のある患者
- 抑うつ状態の患者
- 腎機能障害患者
- 重度の腎機能障害のある患者
- 肝機能障害患者
- 重度の肝機能障害のある患者
- 妊婦
- 授乳婦
- 小児等(6歳未満の患者を対象とした臨床試験は実施していない)
相互作用・併用注意(併用に注意すること)
インチュニブ錠1mg・3mg 添付文書
- CYP3A4/5阻害剤(イトラコナゾール、リトナビル、クラリスロマイシン等)
- CYP3A4/5誘導剤(リファンピシン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン等)
- 中枢神経抑制剤(鎮静剤、催眠剤、抗精神病薬、フェノチアジン誘導体、バルビツール酸誘導体、ベンゾジアゼピン誘導体等)
- アルコール
- バルプロ酸
- 降圧作用を有する薬剤(β遮断剤、Ca拮抗剤、ACE阻害剤、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤、降圧利尿剤等
- 心拍数減少作用を有する薬剤(ジギタリス製剤等)
まとめ
一番大事なのは、学校生活やお友達関係で、お子さんが困っていないかということです。そして、お子さん自身がどうしたいのか。
コンサータが中枢刺激薬なのに対し、インチュニブとストラテラは非中枢刺激薬。依存性が気になる方にとっては、インチュニブかストラテラが選択肢にあがります。ストラテラよりも早く効果を実感できるという点で、選択肢にあがってくると思います。
また、コンサータとの併用で効果を示している場合もあります。(薬の数を増やしたくないというお声も多いのですが…)
ご家族でよく相談してみてください。迷ったときは、医師、薬剤師に相談してください。
参考
日本小児神経学会:注意欠如・多動症(ADHD)にはどの様な治療法がありますか?
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