ADHD(注意欠如多動症)と診断された患者さんに、薬での治療を勧められることがあります。
その中のひとつがコンサータ。 こどもにコンサータを飲ませて大丈夫かな?と心配になると思います。
私は、調剤薬局で働いている現役薬剤師です。コンサータの説明も数多くさせていただいています。
コンサータのメリット・デメリットなど、わかりやすく解説したいと思います。お子さんにコンサータを服用させることに悩んでいる保護者の方の参考になれば幸いです。
コンサータは、どんな薬?
最初に、ADHDの症状と治療、コンサータについて説明します。
ADHDの症状と治療
ADHDの主な症状は、以下の通りです。
- 不注意(忘れ物が多い、物事に集中できず、うっかりした間違いをしやすい)
- 多動症(落ち着きがなく、じっとしていることができない)
- 衝動性(思いついた行動を唐突に行い、順番待ちや我慢ができない)
ADHDの治療は、環境への介入、行動への介入から始めて、必要に応じて薬による治療を組み合わせます。
- 環境調整
- ペアレント・トレーニング
- ソーシャルスキル・トレーニング
- 薬による治療
ADHD治療薬 コンサータ
コンサータは、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)の患者さんに使用される薬です。
中枢神経刺激剤と呼ばれるグループに属します。
脳内の神経伝達物質(ドパミン、ノルアドレナリン)の働きを強める作用により、中枢神経系が刺激され、注意欠陥/多動性障害ADHDの症状(注意力散漫、衝動的で落ち着きがないなど)を改善します。
コンサータのメリット
コンサータは、効果を実感しやすいこと・1日1回の服用・医師の指示があれば休薬できることなどがあげられます。
コンサータの効果
コンサータを服用している患者さまに薬の説明をさせていただく機会が多いのですが、効果を実感されている方が多いです。
朝1回の服用で有効率は約70%と効果の高い薬剤として評価されています。
日本小児神経学会:Q69:注意欠如・多動症(ADHD)にはどの様な治療法がありますか?
お子さんの場合、効果を実感しない薬を毎日飲むことは苦痛になります。治療のための薬を飲むことがストレスになってはいけません。効果を実感すると、継続しやすいのではないかと思います。
用法・用量
コンサータは、1日1回だけの薬です。朝だけの服薬なので、飲み忘れが少なくなります。
コンサータの効果持続時間は、約12時間。朝ごはんの後に薬を服用すると、晩ごはんの頃には効果がなくなってきています。
毎日服用しなくてもいいことも、メリットではないでしょうか。基本は、毎日服用していただく薬です。 医師から指示がある場合ですが、学校のない土曜日、日曜日や、夏休みなどの長期休暇中は、薬をお休みされる方もいらっしゃいます。
〈18歳未満の患者〉
通常、18歳未満の患者にはメチルフェニデート塩酸塩として18mgを初回用量、18~45mgを維持用量として、1日1回朝経口投与する。増量が必要な場合は、1週間以上の間隔をあけて1日用量として9mg又は18mgの増量を行う。なお、症状により適宜増減する。ただし、1日用量は54mgを超えないこと。
- 用法及び用量に関連する注意
- 本剤は中枢神経刺激作用を有し、その作用は服用後12時間持続するため、就寝時間等を考慮し、午後の服用は避けること。
コンサータ錠18mg27mg36mg 添付文書
- 効能又は効果に関連する注意
- 本剤の6歳未満の幼児における有効性及び安全性は確立していない。
飲み忘れた場合、決して2回分を一度に飲まないでください。気がついた時に、できるだけ早く服用します。ただし午後の服用は避けてください。
コンサータのデメリット
デメリットは、大きく分けると3つ。錠剤しかないこと・流通管理システムへの登録・副作用があげられます。
剤形
6歳から服用できる薬ですが、フィルムコート錠(徐放錠)です。一番小さいコンサータ錠18mgでも12mm(1.2cm)の大きさです。錠剤を飲み込めないお子さんも多くいらっしゃいます。錠剤が飲めるようになってからの服用になるため、服薬の練習をする場合もあります。
コンサータ錠18mg | コンサータ錠27mg | コンサータ錠36mg |
---|---|---|
長さ:12mm 直径:5.3mm | 長さ:12.2mm 直径:5.3mm | 長さ:15mm 直径:6.8mm |
徐放性製剤(少しずつ薬の成分が出てくる構造)であるため、噛んだり、割ったり、砕いたり、溶かしたりせず、必ず飲み物と一緒にそのまま服用するようにしてください。
「ADHD適正流通管理システム」への登録
処方をしてもらうためには「ADHD適正流通管理システム」への登録が必要になります。登録は処方医を通じて行います。
このシステムに登録している医師しか処方箋は出せませんし、登録している薬局でないとコンサータは扱えません。 家の近くの薬局でもらいたいと思っても、取り扱っていないことがあります。
コンサータの副作用
副作用で、最も多いのは食欲低下です。私の印象では、3~4割の方で食欲が落ちています。
お昼ごはんの時間が最も食欲落ちるため、給食が食べられないという方も多くいます。その場合は、担任の先生に、薬の副作用であることを伝えておいてください。
食欲が落ちることも関係しますが、体重が減少することがあります。成長著しい時期なので、体重の増減はチェックが必要だと思います。
不眠も副作用では上位にあがってきます。ただし、服用時間をはやめることで改善される場合もあります。
コンサータは効果時間が一定なので、習い事や塾の時間に薬の効果が切れています…という相談もかなり多いです。
重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
コンサータ錠18mg27mg36mg 添付文書
- 剥脱性皮膚炎(頻度不明)
- 広範囲の皮膚の潮紅、浸潤、強いそう痒等の症状があらわれることがある。
- 狭心症(頻度不明)
- 悪性症候群(Syndrome malin)(頻度不明)
- 発熱、高度の筋硬直、CK上昇等があらわれることがあるので、このような場合には体冷却、水分補給等の適切な処置を行うこと。
- 脳血管障害(血管炎、脳梗塞、脳出血、脳卒中)(頻度不明)
- 肝不全、肝機能障害(頻度不明)
- 肝不全(急性肝不全等)、肝機能障害があらわれることがある
その他の副作用
発現頻度が高い副作用のみ記載しています。
記載された副作用がすべてではありません。気になる症状が出た場合は、医師または薬剤師に相談してください。
コンサータ錠18mg27mg36mg 添付文書
1%以上 代謝障害 食欲減退(40.8%) 精神障害 不眠症(18.2%) 心臓障害 動悸(12.1%) 胃腸障害 悪心(11.7%) 臨床検査 体重減少(16.4%)
その他の注意事項
禁忌(次の患者には投与しないこと)
コンサータ錠18mg27mg36mg 添付文書
- 過度の不安、緊張、興奮性のある患者
- 閉塞隅角緑内障の患者
- 甲状腺機能亢進のある患者
- 不整頻拍、狭心症のある患者
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 運動性チックのある患者、Tourette症候群又はその既往歴・家族歴のある患者
- 重症うつ病の患者
- 褐色細胞腫のある患者
- モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害剤を投与中又は投与中止後14日以内の患者
特定の背景を有する患者に関する注意
次の症状のある方は、コンサータの服用に注意が必要です。医師に相談してください。
コンサータ錠18mg27mg36mg 添付文書
- 合併症・既往歴等のある患者
- てんかん又はその既往歴のある患者
- 高血圧、心不全、心筋梗塞を起こしたことのある患者
- 患者の心疾患に関する病歴、突然死や重篤な心疾患に関する家族歴等から、心臓に重篤ではないが異常が認められる、若しくはその可能性が示唆される患者
- 脳血管障害(脳動脈瘤、血管炎、脳卒中等)のある患者又はその既往歴のある患者
- 精神系疾患(統合失調症、精神病性障害、双極性障害)のある患者
- 薬物依存又はアルコール中毒等の既往歴のある患者
- 心臓に構造的異常又は他の重篤な問題のある患者
- 高度な消化管狭窄のある患者
- 開放隅角緑内障の患者
- 妊婦
- 授乳婦
- 小児等(6歳未満の幼児を対象とした臨床試験は実施していない)
- 高齢者
相互作用
併用禁忌(併用しないこと)
MAO阻害剤(パーキンソン病の薬)
コンサータ錠18mg27mg36mg 添付文書
- セレギリン(エフピー)
- ラサギリン(アジレクト)
- サフィナミド(エクフィナ)
併用注意(併用に注意すること)
コンサータ錠18mg27mg36mg 添付文書
- 昇圧剤
- クマリン系抗凝血剤(ワルファリン)
- 抗痙攣剤(フェノバルビタール、フェニトイン、プリミドン)
- 三環系抗うつ剤(イミプラミン等)
- 選択的セロトニン再取り込み阻害剤(フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、エスシタロプラム)
- 選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(アトモキセチン)
- クロニジン
- アルコール
- リスデキサンフェタミン
まとめ
一番大事なのは、学校生活やお友達関係で、お子さんが困っていないかということです。
そして、お子さん自身がどうしたいのか。
困りごとを少しでも取り除いてあげる手段のひとつが、薬です。しかし、お子さんにとって、薬を飲むことがストレスになるのであれば、それは最適解ではないかもしれません。
ご家族でよく相談してみてください。迷ったときは、医師、薬剤師に相談してください。
参考
日本小児神経学会:注意欠如・多動症(ADHD)にはどの様な治療法がありますか?
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